残念なことに、SOIフルスポイラーが方々から「地味」という声が聞こえてくる。そして私個人としても、その評価を覆しうるシナジーはせいぜい赤黒吸血鬼くらいしか発見できなかった。
 よってパワーカードを詰め込んだミッドレンジを考える段階に入るわけだが、トップ勝負になりやすいミッドレンジにとって裏目の少ない除去を取ることは非常に重要であるし、逆に除去を考えることはよりタフなフィニッシャーの選定にも役立つといえるだろう。ついでに言うと赤黒吸血鬼のようなアグロ寄りのデッキは、さらに除去の枠が限られるためこの問題はより切実になる。吸血鬼を活躍させてSOIのSIO感を軽減するためにも除去を考えることは重要だ。

 今回仮想敵として想定するクリーチャーとその選定理由を上げていく。
《搭載歩行機械》
フィニッシャーと言うにはマナレシオが微妙だが、その性質は使いやすく対処できないと手がつけられなくなるクリーチャーそのものであるといえるだろう。

《森の代言者》
2マナクリーチャーでありながら警戒と土地が伸びるとフィニッシャーとして十分なスペックを持つ。特に消耗戦ではミシュラランドが強化されるのは大きい。

《反射魔道士》
そもそも除去を撃つほどのサイズのクリーチャーではない気もするが、ライフが詰まっているのに不幸にも手札にこれでバウンスされたクリーチャーと同名のカードしかないなど、除去せざるを得ない状況に追い込みやすい性質を持っているため上げておく。

《精神壊しの悪魔》
昂揚を達成できなかった場合のデメリットは大きくデメリットを無視できるデッキには少し重いものの、《浄化の天使、アヴァシン》に勝てる飛行・タフネス5というスペックは昂揚さえ達成できれば非常に頼りになる。

《浄化の天使、アヴァシン》
登場時に破壊不能を得るが、その能力にスタックすればタフネス修正や布告といった破壊不能に強い除去でなくても倒せる。

《現実を砕くもの》
地上ではあるもののタフネス5。そもそも多くの除去に強制的なディスアドバンテージを負わせられるが、きっちり回避能力を持っているため除去以外にろくな対処方法がないという厄介なクリーチャー。

《優雅な鷺、シガルダ》
《精神壊しの悪魔》と同様のステータスに加え、トークン生成による高い盤面制圧力を持つ。こいつを除去しなければ、苦し紛れにトークンを除去することすら許されず、相変わらず布告に強い。

《龍王オジュタイ》
攻撃時には基本的に呪禁が解けてしまうが、逆にそこを狙って除去できなければライフ・カード両面のアドバンテージ差が大きく開いてしまうという強力なクリーチャー。

《龍王シルムガル》
まともなカードを奪われて排除できなければほぼ負け。維持できればこいつ自身がPW含めて裏目のほぼない除去以上の何かである。

《龍王アタルカ》、《世界を壊すもの》以上のサイズのエルドラージ
対ランプは除去がないと厳しいだろう。

黒編

《究極の価格》
2マナでシングルシンボルのインスタントでタフネスを参照しない貴重なカード。
《包囲サイ》《先頭に立つもの、アナフェンザ》そして《カマキリの乗り手》といった目の上のたんこぶが落ちた今、ラヴニカ~テーロス期の栄光を取り戻せるか。

裏目

《搭載歩行機械》
間違いなく前環境で活躍できなかった原因の一つ。

《反射魔道士》
選定理由の項に同じ。

《龍王オジュタイ》
3色のマナベースがしっかり組めた場合、前環境でも多かった《強迫》《精神背信》で手札を覗いてから殴ってくるパターンが想定される。その場合に手札にこれを含む2枚の除去を持っていても安心できないのは大きい。

《現実を砕くもの》
これだけでなくエルドラージデッキ相手にはほとんど紙切れ同然になってしまう。

《優雅な鷺、シガルダ》《龍王シルムガル》
いずれも制圧力が高く、なるべく早く除去してしまいたいクリーチャーであり、これらを前にしてまごついてしまうのは厳しい。

《龍王アタルカ》及び各種エルドラージ
タフネスを参照しない除去にもかかわらず、ランプ相手にはマナクリ以外処理できない。そのマナクリも《面晶体の這行器》ならやはり除去できない。なんだかタフネス参照除去より役に立たない気がしてきたぞ。

《闇の掌握》
 こちらも2マナインスタント。ただしダブルシンボルであることに注意。《包囲サイ》がわんさかいた前環境でさえ多数使われていたので、活躍は十分期待できる。新環境では、《浄化の天使、アヴァシン》の破壊不能を気にしなくていいのが最大のポイント。アヴァシン自身も表なら除去できる。
 《包囲サイ》という最強クラスのタフ5クリーチャーが落ちた今、-4/-4修正の射程範囲は以外なほど広く、アヴァシンの他にも《雷破の執政》《ゴブリンの闇住まい》や攻撃してきた《龍王オジュタイ》を除去でき、インスタントであることも相まってテンポを取りやすい。

裏目

《森の代言者》
ゲームがぐだってしまうと、これを手札に抱えながら苦い顔をして殴られ続けることもあるだろう。逆に序盤ならベストな対処のひとつ。

《精神壊しの悪魔》
これが多いと《究極の価格》の方がいいかもしれない。

《優雅な鷺、シガルダ》《龍王シルムガル》
《究極の価格》の項に同じく。

《龍王アタルカ》及び《世界を壊すもの》以上のサイズのエルドラージ
腐ってもマイナス修正である以上、こういった規格外の相手を想定した除去として取るのは無謀だろう。

《死の重み》
やったぜ! 赤だけじゃなく黒でも《ヴリンの神童、ジェイス》を1マナで除去できるぜ! しかもエンチャントなので昂揚達成にも一役買うぜ!

裏目
仮想敵のラインナップ的に多すぎるので省略するが、役割的に《森の代言者》が落とせないのはつらいところ

《破滅の道》
PWまで含めてほぼ裏目のない除去であるが、3マナで黒ダブシンのソーサリーなためとにかく重い。

《餌食》
昂揚を達成すれば《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》や《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》とトークンを一緒に持っていけたりする。達成していなくても、他にクリーチャーもPWもいなければトークンを出す能力にスタックして撃てばPW本体を処理できたりする。が、インスタントであるといえども3マナと重い。とはいえ、エスパードラゴンで猛威を奮った《忌呪の発動》も3マナ。幸い《死の重み》はメイン採用が考えやすく墓地にも落ちやすいエンチャントだし、布告が強い環境になれば十分採用圏内だろう。

《自傷疵》
相変わらず緑と白のクリーチャーがやたらめったら強いため落ちるまでお世話になりそう。

裏目
《優雅な鷺、シガルダ》
《精神壊しの悪魔》
《龍王シルムガル》
《搭載歩行機械》、各種エルドラージ

やっぱり黒の敵は黒(とアーティファクト)! 《恐怖》も《破滅の刃》も許されない今のスタンダードではもはや潔い! そして相変わらず布告に強いシガルダ!


《焙り焼き》
《闇の掌握》で対処できない《現実を砕くもの》を対処しつつ《難題の予見者》も射程に収められるのは大きいし、いつでも《森の代言者》を除去できるものの、
裏目が
《精神壊しの悪魔》
《浄化の天使、アヴァシン》
《優雅な鷺、シガルダ》
《龍王オジュタイ》
《龍王シルムガル》
《龍王アタルカ》、《世界を壊すもの》以上のサイズのエルドラージ
ととにかく多い。
 こうして列挙すると分かるが、とにかく飛行クリーチャーのパワーカードが多いので前環境のアブザンアグロのように、低マナ域から高マナ域までこのカードで幅広く対処できるような相手はほぼいないのかもしれない。エルドラージの高マナ域のクリーチャーには強いが、低マナ域のプレイアブルと思われるクリーチャーに飛行持ちが多い。

《稲妻の斧》
あのグリセル投げる斧がまさかの再録。
テンポかカードのどちらかを失うが、代わりに《焙り焼き》相当の火力を飛行クリーチャーに撃てる。赤では貴重なタフ5飛行を除去できるカード。共鳴者としての運用も可能。

裏目
《龍王アタルカ》、《世界を壊すもの》以上のサイズのエルドラージ

《焦熱の衝動》
《罪を誘うもの》が使われるようなら射程が広がるかもしれない。魔巧達成でタフ3を射程に収めうるのがこのカードがタフ3環境でも使われる理由。

裏目
例によって省略

《極上の炎技》
除去としてみればほぼ《闇の掌握》と範囲は同じ。そう考えると3マナのソーサリーというのが重くのしかかる。

《ヴァラクートの涙》
《焙り焼き》が裏目るクリーチャーをたいがい除去できると考えると、もしかするとメイン採用も一考に値するのかもしれない。


《絹包み》
除去が弱すぎてこのカードが一躍脚光を浴びた前環境より更に除去が弱くなっているので、《ヴリンの神童、ジェイス》をはじめとする低マナ域の厄介なクリーチャーを確実に排除するために間違いなく使われるだろう。《森の代言者》をいつでも除去できるし、《搭載歩行機械》に至っては《ドロモカの命令》の裏目まで消えるただのカモである。ちなみに《不敬の皇子、オーメンダール》も除去できる。

裏目
今回想定しているクリーチャーが4マナ以上のたいていフィニッシャークラスのため、必然的に非常に多くなるため省略する。

《隔離の場》
PW以外の裏目がなく瞬速持ちであるため《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》も射程に収められるが、3マナも払って《ドロモカの命令》の餌食にされた日にあなたは真剣にこのカードをデッキから抜くことを考えるだろう。ダブシンなのも、《絹包み》で除去できないもののこの手のカードに弱いタイプのクリーチャーが痛い。

 上記2枚は多くのデッキでメイン採用しやすいインスタントであることは昂揚達成の大きな助けとなるだろう。

《石の宣告》
 数少ないSOI収録の構築でよく見ることになりそうな除去。たった2マナで明確な除去耐性持ち以外のどんなクリーチャーも追放出来るだけでなく(おまけに同名が複数並んでいれば複数除去できる!)、トークン相手ならデメリットが誘発せずまとめて追放できるとなるとやり過ぎにさえ見えるが、最終的にカードアドバンテージの面で損してしまう性質は意外と賛否両論でもある。マナが余りがちなランプなんかが相手だと辛い目に遭うかもしれない。
 そもそも死亡させず、《永代巡礼者、アイリ》などで予めトークンにされてしまっていてもトークンをまとめて追放できると、とにかく《搭載歩行機械》に強い点は特筆しておくべきだろう。《搭載歩行機械》《飛行機械技師》《ピア・ナラーとキラン・ナラー》で並べた飛行機械トークンをまとめて追放される赤系トークンの姿をよく見ることになりそうだ。



《垂直落下》《翼切り》
ドラゴンと天使とデーモンが大空を駆けまわるロマン溢れるスタンダードになれば、これらのカードがメイン採用される日がくるかもしれないですね!

多色

《苦渋の破棄》
これもPW含めて裏目のほぼない除去で、クリーチャーPWどころかエンチャントアーティファクトまで追放でき、しかもインスタント。しかし3マナと重く、3点という決して無視できないライフロスがついている。色もデメリットつきの追放という点も《石の宣告》と被るため、環境の多くを占めるデッキが重視するライフとカードのアドバンテージの比重が後者に大きく傾くまでは《石の宣告》の方が使われそうではある。

《反射魔道士》
ほぼcip確定除去つきの3マナ2/3として扱われている向きがあるが、とはいえ2ターン後に相手が出し直す余裕がない展開にいつも持っていけるとは限らないため、バウンスに強そうでかつプレイアブルと思われるクリーチャーを挙げておこう。

《森の代言者》
《ゴブリンの闇住まい》
《精神壊しの悪魔》
一回目のcipで昂揚を達成できていなかった場合、2回目のcipで昂揚を達成されてしまう可能性がある。

《龍王シルムガル》
これを出せる頃には相手もたいていギリギリなので奪い返したカードで挽回できそうではある。ただし、奪い返したパーマネントは召喚酔いする点に注意。

《ドロモカの命令》《コラガンの命令》《シルムガルの命令》
 まとめるのは乱暴な気もするが3枚とも大きいクリーチャーがつらい点は共通している。特に《コラガンの命令》は相変わらずのタフ3環境だと思われるのが辛いところ。あとマナ立ってる状況でハンデス撃つとマッドネスされかねないのも注意。
 逆にバウンスが有効なクリーチャーに新たに変身クリーチャーが加わり、PWにも強い《シルムガルの命令》はもしかすると評価が上がるかもしれない。

 とりあえず筆者が思いついたのは以上である。なんだか2マナの除去は《石の宣告》以外どれもこれも裏目だらけなので、また《絹包み》のように埋もれていたが実は有用な除去を発掘する作業をしてみてもいいかもしれない。
 逆にフィニッシャーを選定する場合、マナコスト4以上・飛行・多色・タフネス5以上という条件をなるべく多く満たすカードを選べば、2マナの除去で大きくテンポを奪われるということが少なく安定して運用できそうである。青黒絡みの強いアーキタイプがあるか微妙だが、もしできれば《龍王シルムガル》による一発逆転が非常に狙いやすい環境であるといえるだろう。あと、どうしても《浄化の天使、アヴァシン》と比較されがちな《優雅な鷺、シガルダ》だが、もっと評価を上げてもいいかもしれない。
 それでは、良いミッドレンジライフを。

コメント

nophoto
通りすがり
2016年4月6日10:53

ランプを使う立場から見ると、石の宣告はかなり脅威ですね
というのも、確かに調査のマナこそ簡単にひねり出せますがランプは終盤役に立たないマナ加速カードがデッキに大量に入っているため、
虎の子のフィニッシャーと1ドローでは全く釣り合わないのです(泣

nophoto
虹風
2016年4月6日21:23

単純に調査のマナが払えるかどうかで考えてましたが、確かに確率論で考えるとそうなりますね、、、ありがとうございます。

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